2016/10/26

名刺入れと、こぎん刺しを始めたきっかけ

前回の記事でこぎん刺し教室のことを書きましたが、私も同じ布と糸の組み合わせで名刺入れを作ってみました。

模様はだんぶり(とんぼ)です。

からし色の記事に赤系の組み合わせが秋らしいなと思ったので。

コングレスの生地が厚みがあるので、シンプルな一つポケットの物に仕立てました。


一部ではなく、全体に模様が刺してあります。



私がこぎん刺しを始めたきっかけは、ふとしたことからです。

刺繍は小さいころから好きでしたが、フランス刺繍など本があるもの、または祖母が教えてくれた刺し子、キットになっているクロスステッチなどが主でした。

20代初めに体調を崩して仕事を退職し、気持ちも落ち込んでいたので、何か手しごとをしてみたいと思い、近くでたまたま買うことのできた刺し子糸で、クロスステッチの布を埋めてみました。

これがたまたまこぎん刺しに似ていたのです。

また、今まで刺繍のキットにはたくさんの色の刺繍糸が入っていて、それもきれいだと思っていましたが、綿の糸の素朴さがとても落ち着き、「海外の華やかなものも素敵だけれど、何か日本の素朴な刺繍をしてみたい」と思うようになりました。


インターネットで刺繍のお教室を探していたところ、たまたまこぎん刺し教室を見つけ、次のお教室がいつかお電話してみたところ、なんと今日の午後ですよ、とのこと。

普通は見学に行ったりするのかもしれませんが、すぐに「今日、始められますか?」と聞いて、その日の午後にはお教室にいたのでした。


こぎん刺しは素朴に見えるので、一見針仕事の好きな方であれば簡単に刺せそうに見えます。
しかし、一面に糸を刺していくので、丁寧に刺さないと、最後に布にしわが寄ってしまいます。

また、刺繍枠も使いません。
運針の要領で、横に一気に刺していきます。それでいてふっくらと見せるのがこれまた難しく、私もまだまだだな・・・と刺すたびに思います。


この後こぎん刺しがブームになり、今では刺繍の中のジャンルとして一般的になりました。

一度、先生に聞いてみたことがあります。
「なぜ先生は一面に刺されるのですか?」

すると、先生は、こぎん刺しというのは刺繍ではあっても、昔は麻の布の隙間から風が入ってこないようにびっしりと刺すものでだったのよ。

今は一つ模様を入れて雑貨のように使えるけれども、それでこぎんと言っては、昔の方に申し訳ない気がするの。
とおっしゃったのです。

確かに、今ではびっしりと布を埋めなくても寒さをしのげる時代になりました。
しかし、昔、麻布と少しの綿の糸しか使うことの許されなかった時代の方にとっては、一面に刺して隙間のない布のようにすることはお洒落ではなく、寒さをしのぐために必要だったのでしょう。

それも、今のように蛍光灯の灯りもない中、家族分の服を刺す・・・とても大変だったと思います。


こんなお話を聞いてから、私も自分で刺すときは全体に模様が入るようにデザインをするようにしています。

世界には様々な刺繍がありますが、その手法が生まれた背景を知ることは、作品つくりにおいてとても大切だと、改めて感じました。

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